「星ってさ、夜になったら地球に黒い幕が掛かってて所々破けてるのが、そう見えてるだけ何じゃないかと思ってたんだ」
「はあん」
「ごめん、もっといい反応が返ってくると思った俺が馬鹿だったんだな」
「・・・少なくとも俺はそんな風に思ったことはねえよ」


跡部はいまだ暗い天井から目を離さず、長くて細い足を組み直し、そこに佇む星たちを愛でていた。まったく、どこのどいつが造ったか分からぬこのプラネタリウムというものは、こんなにも人の心を鷲掴みにしてしまうのか。俺の隣に座っているこの天の邪鬼でさえも食い入るように、輝く光の粒たちを眺めている。白い絵の具をこぼしたように瞬く冷たい光が、照明を落とした部屋の天井一面に点々と広がっていた。


「じゃあおまえはどう思ってた?」
「あん?」


星たちはどう存在していると思ってた?
俺のこの絵本のような質問に、跡部は眉をひそめじっと考えながらつぶやいた。


「考えたことも、なかったかもしれない」


顎に指を遣って、静かに囁かれたその言葉に俺は頷き、また偽りの輝きに目を奪われていた。跡部も、そのあと物音一つさせずそこにいた。プラネタリウムの美しさは編み目の小さな籠のように、俺たちをさらってゆくのだ。回るように季節が早々と変わり、冬の星座が現れると、俺は息を呑んだ。白と黒の世界にまるで褐色でも混ざり合ったかのような、星たちの鮮やかな物語に感嘆を漏らす。そこには様々なおとぎが宿っている。


「そんなこと、考える必要ねえよ」


跡部が唐突に切り出した。もうプラネタリウムも回り終える頃に。もう眠りに就くかのようなその静かな声に耳を澄ます。


「そんな野暮なこと考えるのは、なんで俺たちが出会ったのかを吟味するほど下らねえ。これは運命だし、変えようのない事実がそこに横たわるだけだ。俺たちが足元でごちゃごちゃ考えてる間も、星は増えるし、俺たちも変わるんだ。今更思惑したところで、わかんねーだろ」


俺たちは。跡部はそう付け加えると、目を瞑った。俺はそれを横で眺め、それもそうかと思った。ただあるだけなら容易い。でもそれが変化を持つと、両手じゃ抱えきれないし、自分の手に収めようとすること自体が、あまりに無謀で無意味で、滑稽だ。ただ歩めばいい。それだけで人は救われるだろう。流れのままに行けば、そこにあるのが答えなんだ。それを愛そう。








          星屑がぶつかって


                    世界のフィナーレを逸脱するのさ























090101 跡部と未来を追い掛ける